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どんなに苦しくても孤独と表現はともだち

水場で小さなカニを見つけた。生きているカニを見るのなんて珍しいから、パッと手で捕まえると小さなハサミでわたしの爪を必死に挟んできた。つい先日塗ったばかりのマニキュアと、少し似た青だ。

わたしの爪はターコイズブルーかな、と美術学生時代のアクリル絵の具で覚えていた色名を思い出すけど、このカニの青はどんな色名が近いだろう。青にもたくさんの名前があって、それでも名付けきれない色もある。ちっとも思い出せなかったのでネットで調べると、「フォーゲット・ミー・ノット」という色名の青がそっくりだった。

君はこんな突然捕まえたわたしに、忘れられたくないのかい。

尾崎豊の「Forget me not」を歌ってみて、歌詞
に滲み出る孤独感に殴られたような気持ちになった。「昨夜のぬくもり」を感じながらも「幸せかい」と問いかける。昨夜のぬくもりだけでは埋められない不安を、どうしても相手の反応で補おうとする。でも「幸せかい」と聞くことだって怖かったんだろう。こんな歌を歌ってしまったら、そりゃ死んでしまうよ。


最近、ほぼ毎日文章を書いていると思う。前に毎日更新をしていたときと全く違う心持ちだ。書かないと正気ではいられない。

今日だって午前中にnoteを書いて、夕方に英語の長文を書いて、今これを書いている。それでも本当は誰かともっと話したいけど、どこまで話せば気が済むのかわからないまま巻き込める人が思いつかない。不健康な表現衝動だと思った。でも表現せずにいられない人なんて、みんなどこかしら不健康なんだろう。

実際にはわたしは孤独な状況にはいない。家族もいるし、安全に生活している。それでも孤独を振り切れない。飼い馴らせない孤独は、文章を書いたり、英語や音声noteで吐き出したりする。そのうち表現が文章ではなくなって、絵になったり、写真になったり、音楽やまた他の何かになるのだろう。予測のつかないループ。

絵を描く手を止められない美術学校時代の同級生を見て、自分の情熱の無さに落胆したことを肌感覚として思い出せる。今思うと、わたしは情熱でものをつくれる人ではなかっただけの話なのかもしれない。わたしの表現の根本は、孤独なんだろう。確信が強まってきた。


芸術家についてあれこれ調べていた時期があった。自分は本当に芸術家としてやっていけるのか。そんなこと心配しても仕方ないのだけど、占いみたいに誰かに言い当ててもらいたかった。わたしの持っている双極性障害、HSP/HSSを追加キーワードにすると、あまりに似たような芸術家が多くて、もう逃げられないと思った。もちろん似てるからといってわたしが何かを成せるかどうかの判断材料にはなり得ない。逃げられないけど、進まないといけない道を見つけてしまった。

画家は孤独でなければならない。なぜなら、一人なら完全に自分自身になることができるからだ。たった一人の道連れでもいれば、半分しか自分ではなくなる。
―レオナルド・ダ・ヴィンチ

カメラロールを振り返ったら、この名言のスクリーンショットが残っていた。胸の中心を細い針でじっくり刺されるように痛む。こんなに不安定な自分でも、完全に自分自身にならないといけないのか。それは不安定な自分を無理矢理にでもひとりにしないといけないということなのだ。崖から突き落とされたら、どれだけ自分の身体はボロボロになるんだろう。利き手が折れたとしても、逆の手でも足でも使えるものを使わないといけないんだね。

中学生の頃に憧れていたイラストレーターが事故にあったときのことをwebの日記に上げていたことを思い出す。「とっさに右手と目が無事かをまず確かめました」というところに、表現者としてのその人の全てが現れていると思った。


捕まえた「フォーゲット・ミー・ノット」カラーのカニは写真を撮ったらもとの場所に戻した。後からあのカニはサワガニだと知った。サワガニもいくつかカラーバリエーションがあるらしい。意外とオシャレなんだなと笑ってしまった。

ほんの数分触れ合っただけだったけれど、少し近い色の君と会えてよかった。片方だけ大きいハサミを持っていた。アスリートが競技に合わせた身体に変化していくようで、あんな小さなカニを羨ましく思った。わたしも芸術家に適した身体になりたい。その変化が感じられるのはいつになるんだろう。

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きっと生きてまた会えますように
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Artist, JPN よくしゃべる芸術家です。生きづらい民。趣味は外国語と歌です https://instagram.com/minakomasubuchi_jpn
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