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繰り返される昔話の中で願うこと

本当に寝つきが悪くて、ぬいぐるみを抱いていないと眠れない子どもだった。小さな頃からぬいぐるみが大好きで、特にわたしと両親の記憶に強く残っていたぬいぐるみは、ねこの大きなぬいぐるみの、ねこちゃん。

眠るときは必ず、ねこちゃんに抱きついてお布団に入っていた。デパートで一目惚れして買ってもらった、白くて毛が長いふわふわのねこちゃん。鼻はピンクで、白いひげがピンと立っていた。

わたしがあまりにも毎日ねこちゃんを連れ回し、匂いをかぎながら眠る毎日だったので、ねこちゃんはどんどんくたびれていってしまった。真っ白だった長い毛は全体的に灰色で巻き毛のようになってしまい、ひげはチリチリに縮れてしまった。体も綿が寄ってぐんにゃりとし、印象がかなり変わってしまった。

それでも、わたしはそのねこちゃんが大好きだった。今はもう亡くなってしまった父方のおばあちゃんの家にも必ずねこちゃんを持っていっていたのだけど、おばあちゃんの家から自宅に帰るのが毎回悲しくて大泣きし、ねこちゃんのことを忘れてしまうことが何度もあった。

「ばあちゃんの家からやっとこさ帰ろうってなったときに、みなこ(わたし)が『ねこちゃんがいない〜!』って騒いでさ〜!1時間以上帰り道を車で走ってたのにさ、仕方なくて取りに帰ったよね〜それが何回もあったよなあ」

「みなこがいっつも持って歩いてるから真っ白だったのが灰色でぐでーっとしたねこになっちゃってさ〜、でも大事に抱えてたよなあ〜」

親戚が集まり、わたしの昔話になるとよく父がこんなことを繰り返しみんなに話す。みなこは昔から仕方ないやつだな〜と毒舌な叔父やみんなが笑う。わたしは一緒に笑いながら、あっという間に年をとった親戚を見渡し、ハッとする。こうやって集まれるのもあと何回あるのだろう。

くたびれたねこちゃんは、小学校に入っても抱いて眠っていたけれど、同級生には子どもっぽいと思われそうで、恥ずかしくてねこちゃんと眠っていることを隠していた。

転機は地域の子ども会でのキャンプが開催されたとき。「何か言われたら恥ずかしい」と思い、思い切ってねこちゃんを家に置いてキャンプに行った。

ねこちゃんがいなくても眠れたことをきっかけに、わたしはねこちゃんからだんだん卒業していった。そのあとねこちゃんをどうしたのかは覚えていない。

だけど、わたしの両親がわたしの小さな頃のねこちゃんとのストーリーを覚えている。繰り返し親戚との間で思い出話としてねこちゃんの話が出て、それは何度親戚が集まっても繰り返される。だから、わたしは今でもねこちゃんのことを忘れない。わたしは夫にもねこちゃんのことを繰り返し話す。

何度でも、いくら笑われても、ねこちゃんとわたしのことを親戚みんなで笑いながら話したい。「それいつも話してるじゃん!もういいよ〜!」なんて言いながら、わたしは親戚みんなからの優しい眼差しを感じて愛されてきたと実感して涙が出そうになり、親戚みんながこんな風にずっと元気でいて欲しいと願った。

大切な家族の大切な日に、脈々と流れる血のつながりを感じ、愛されて育ってきたことに感謝の思いでいっぱいになった。わたしも元気に生きなければ。

ねこちゃんはもういなくなってしまったけれど、もしわたしや兄弟に子どもが生まれて家族が増えても、ねこちゃんの話を笑って話していられるといいなあと思う。

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Minako Masubuchi / Artist

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Minako Masubuchi / Artist

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