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人生を謳歌する歌が歌える日

「It's not my day」という英語表現が好きだ。「今日は最悪(自分の日じゃない)けど、明日は違うかも!」みたいな感じらしい。わたし自身、人やモノに助けられてその日の捉え方が変わったことは何度もあった。でも今振り返ると、どんな日も自分の日ではなかった気がしてくる。自分の人生の全てがズレているのだろうか。

美大予備校に通っていたとき、先輩が「音大の先生が、恋をしないと本当にいい音は出せないんだって言ってたよ」と飲みの席で言っていたのを覚えている。その先輩は学科内のモデルみたいな女の子と付き合っていて、そりゃあいい音でもいい色でも出せるでしょうねえと密かに鼻で笑った。その時わたしは彼氏もできたことがなかったし、女性経験もなかった。ずいぶん昔の話だ。

それからはそれなりに色々なことを経験したけれど、よく「わたしが女として生まれたのは間違いだったんじゃないだろうか」と思うことがある。性自認は完全に女だし、一般的に女らしいタイプではないとはいえ、女性として扱われるのは嬉しい。でも自分が女であることで面倒なことが多かった。仲の良い友達が異性だと変な目で見られるし、女らしくないわたしに男性たちはそれでも気を遣う。

わたしが恋愛対象として好きになってきた男性たちは口を揃えて同じようなことを言う。「恋愛対象としては見れないけれど、君の絵が好きだからこれからも頑張ってね」。はて何の冗談だろうか。日本語が無茶苦茶ですけど。わたしは1人の女としてあなたに見て欲しいと言っているのに。絵もわたしの邪魔をするのか。わたしという人間を認められたい、愛されたいという思いの邪魔をするのか。

でもそれもわたしのせいだ。たぶんわたしが吐き出しきれない苦しさを、絵やら何やらに詰め込みすぎたんだろう。


今日もわたしの日じゃなかった。いつになったらわたしの日は来るんだろう。先日、辞めることに決めたボイストレーニングのレッスン最終日だった。お金ができたらずっと通いたいと思っていたけれど、今のわたしにはそんな余裕はなかったから、自分から辞めることにした。

最後のレッスンで、何度もお願いした面白い先生といつも通りおしゃべりした。お互い会話が止まらなくなるタイプなので、いつも「あっレッスンしないとね」という感じなのだけど、最終日は特にひどくて、会話9:歌1くらいだった。どうやらミュージシャンの世界も色々面倒なことが多いらしくて、先生は色々できるタイプなので「専門は何なんですか?」なんて聞かれるらしい。そのたびに困ると言っていた。

もともと自力でなんとか歌えるようになりたかった歌は、とにかく高音を伸ばしたかった。でも先生は「あなたは低音もすごくいいから、どんどん歌って欲しいです」と言ってくれて、平原綾香のJupiterはどうか、うーん僕のおすすめはMisiaかな、と「つつみみ込むように…」を通しで1回、最後の転調する部分をもう一度歌い直してレッスンは終わった。いつかまた何かできたらいいですね、と話して笑顔でスクールを後にした。

その「つつみみ込むように…」を、今日精神科で愚痴って帰ってきたあとに歌い直してみたら、えらく優しくてポジティブな歌だと思った。最近わたしは自分のつくったものに生かされるどころか殺されてばかり。いつか自分の日を謳歌できるようになって、素敵なものが作れるようになるんだろうか。

一個人としてはぜひそうありたいものだけど、表現をしていくのならきっとそんな素晴らしい日々は来ない。

指絡めかわした あの日の約束
今も心の中 カギかけて温めたいね


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人生を生き直す長い旅をしています。お返しは何もできないかもしれませんが、旅のおともにいただけたらとてもありがたいです。

きっと生きて会えますように
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Minako Masubuchi / Artist

Artist, JPN / Artist, JPN 視覚と音楽や文章、感覚全てを使って日本の生きづらさを突き抜けたい https://instagram.com/minakomasubuchi_jpn
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